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【コラム】匂いの記憶 ーココロのセーフスポットー

2023/3/20

【コラム】匂いの記憶 ーココロのセーフスポットー 近年、春や秋がなくなり、冬の後にはすぐに初夏が、夏が終わるとすぐに初冬が訪れる感覚をお持ちの方もいらっしゃると思います。記憶の中では入学式の頃に咲いていた桜が、卒業式を彩る花の代表として語られるようになった地域も多いようです。それでも、日本は国土の大部分が温帯~亜寒帯に属しており(南西諸島や小笠原諸島を除く)、私たちにとって季節の移ろいは日常の中で感じることができる自然からのメッセージと言えるかもしれません。

 では、皆さんは季節の移ろいを何によって感じているでしょうか。
例えば春の訪れはどうでしょうか。鼻がムズムズして涙目になってきたら、八百屋さんの店頭に山菜が並びだしたら、薄手の上着を自然に選ぶようになったらなど、その人なりに感じるポイントは様々でしょう。視覚からの情報だったり、体感に変化が起きた時であったり、中には「匂い」や「香り」など嗅覚によって季節を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


新聞紙に包まれてはこばれてきた花束が
石油ストーブに暖められて
春のよきかおりを放つ


これは、水野源三という詩人が書いた詩の一節です。水野源三は幼いころの高熱により重い障害を得ることとなり、ほとんどの身体機能の自由が利かない中、自発的に動かすことができた瞬きによって意思を表し、詩作をしていました。一生のほとんどをベッド上で過ごし、限られた情報しか得ることができませんでしたが、それでもこの詩からは春の訪れをいきいきと感じている様子が伝わってきます。
このいきいきとした感覚を私たちに届けてくれるのは何でしょうか。それはおそらく目に見える石油ストーブでも花束でもなく、その空間に満ちているであろう「香り」であり、私たちがその匂いを想像できるからではないかと思います。
「きっとまだ外は寒いんだろうな、雪もあるかもしれない。そんな中、とても親しい人が花束を持ってきてくれたんだろう。新聞紙の匂い、石油ストーブの匂い、そして温められることで花束の香りがより一層強く感じられて、部屋の中にいても春の訪れが感じられたのだろうな」

 この「香り」や「匂い」ですが、誰にとっても好きな「香り」や「匂い」があると思います。不思議なのは、香りや匂いの好き嫌いは、単純に快・不快と一致しないことです。皆さんにも「良い匂いだけど嫌い」とか「良い匂いではないけど好き」ということがありませんか。例えば、詩にも出てきた石油ストーブの匂いはどうでしょうか。石油の匂いは多くの人にとって臭くて嫌いなものかもしれませんが、それが「石油ストーブの匂い」と言った途端に、「好き」という人が増えるように感じます。これは石油ストーブの匂いと一緒に経験した、例えば「おばあちゃんの家の光景」とか、「家族で一緒に過ごした記憶」がセットになることでそのように感じられる側面もあるものと考えられます。

【コラム】匂いの記憶 ーココロのセーフスポットー
 さて、こういった実際には目に見えない情報や感覚を使って手軽にできるリラクセーション法があります。【安全な場所】という方法です。これは空想でも、自分の経験の中でも良いのですが、軽く目を閉じ、自分がホッと安心できる場面や場所を思い浮かべ、そこで、見えるもの、聞こえてくる音、身体に感じる感覚、そして感じられるにおいを確かめていく方法です。そうすることで、目の前は少し大変な状況だったとしても、自分自らホッとできる状態を作ることにつながります。

春は少し心浮き立つ季節だという人も多いと思いますが、一方で様々な変化が生じやすくあわただしい、落ち着かない季節でもあるようです。時には一息つく中で自分にとって安心できる「匂い」にも着目してみるのも良いかもしれません。


※水野源三(1937-1984)
詩人。幼少期に赤痢による高熱で脳性麻痺となり、自発的な運動機能の多くを失う。話したり書いたりすることはできなかったが、瞬きにより示された五十音表から意思を伝えることでコミュニケーションや詩作を行った。病後、クリスチャンになり信仰に関する多くの詩を残した。文中の詩は「キリストの愛に」(一部抜粋)。

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